「やめてくれないか…?」

 

 

 

 

わたしの場合、その一言がきっかけでした。

 

 

…………セックスレスで悩むなんて、男性だけだと思ってました。
しなければしないでいい。
女はそれで平気なんだ、と…。

 

 

こんなふうに思ったこともあります。
たとえセックスはなくなっても、夫との関係は変わらないと。
それが夫婦、それが家族の絆というものだと…。

 

 

でも。

 

 

わたしが、女でいるより、娘の母親でいることを選んだとき。
夫は、わたしの前で「男でいること」をやめていたのです。

 

 

……気がつくと、娘を産んでから1年以上、夜の生活から遠ざかっていました。
わたしは…

 

なぜか、焦っていたのを覚えています。

 

 

だから。

 

 

思い切って、わたしのほうから言ってみたのです。

 

夫は。

 

とまどったような、
怒ったような、
悲しいような、
…なんともいえない表情を浮かべていました。

 

 

そして、言ったのです。

 

 

「やめてくれないか」と。

 

 

 

 

きつい言い方ではありませんでした。
彼なりに、思うところがあったのでしょう。
けれど、そのときのわたしには、
怒鳴りつけられたほうが、まだましだと思えました。

 

 

 

セックスレスの悩みは、当事者の問題です。
夫婦や恋人どうしの問題であり、「正解」はどこにもありません。

 

だから、誰にも相談できない。
誰も答えを教えてくれない。

 

 

………そう思って、ひとりで悩んでいる女性はたくさんいるはずです。
かくいうわたし自身が、そのひとりだったのですから。

 

 

 

夫との関係は、その後、ずいぶん長い間そのままでした。
その間、彼がどうやって自分の欲望を処理してきたのか、
わたしは訊ねようともしませんでした。

 

…いいえ、聞くのが怖かったのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

いきなり、自分の話ばかりで申し訳ありませんでした。

 

 

ただ………最初にわかっていただきたかったのは、
こうした悩みは、どんなカップルにも、誰の身の上にでも起こりうる、ということなのです。

 

 

誰でも、自分の悩みは世間によくある悩みとは違う、と思っています。
事実、誰にとっても自分の悩みは「特別」なのです。
だから、他人にわかるはずもないし、わかってほしいとも思わない…。

 

 

 

でも、本当にそうでしょうか?

 

 

以前、NHKの朝の情報番組で「セックスレス特集」が放映されたことがありました。
すると、ほとんどその直後くらいから、わたしのところへも
問い合わせのお電話やメールが急に増えはじめたのです。

 

 

中には、少々心配しすぎなのではないかと思える問い合わせ内容もありましたが、
公共の電波で「セックスレス」の問題を指摘されたことで、
あらためて自分たちの問題に気づかされた、とおっしゃる方も少なくありませんでした。

 

 

本屋さんに行けば、セックスレスについて書かれた本や雑誌がたくさんあります。
インターネットで検索してみても、セックスレスに関するWEBサイトが山ほどヒットします。
そんなふうに、外部からの情報が増えてきたのはいいことなのですが…。
…今度は、別の問題もでてきました。

 

 

 

いったい、何が正解なの?

 

 

セックスレスの原因だとか、解決策について書かれた情報がいろいろありすぎて、
何を参考にしたらいいのかわからない…。

 

そんな悩みの声まで聞かれるようになったのです。

 

はじめに申し上げた通り、セックスレスの問題に「正解」はありません。
100組の夫婦がいれば、100通りの原因があり、100通りの解決策があります。

 

 

そして。

 

これだけはお断りしておきたいのですが、
わたしは決して、夫婦が協力してセックスレスを解消することが
どんな場合にも絶対に正しい…とは思っておりません。

 

 

夫婦によっては、離婚するのが唯一の正解、という場合だってあるでしょう。
その場合は、そもそも、そんなふたりがどうして結婚なんかしたのか?
ということになるでしょうが………それを今さら言ってもはじまりません。

 

 

ただ、わたしの見聞きしてきた範囲では、
「もう離婚するしかない!」と思い詰めている人は多くても、
積極的に「離婚したい!!」と望んでいる人は案外少ないようなのです。

 

 

少なくとも、わたしたち夫婦の場合はそうでした。

 

あれほど「離婚するしかない!」と思い込んでいたのに、
いざ本当に離婚するとなると、どうしても踏み切れませんでした。

 

 

そこで、わたしたちは話し合って、セックスレスの解消に取り組むことにしました。

 

 

この教材の内容は、わたしたち夫婦が参考にし、
実際にトライもしてみた、セックスレス解消のためのあらゆるノウハウを
さまざまな分野の専門家にアドバイスを受けながら一冊にまとめたものです。
さらに、周囲のたくさんの夫婦にもご協力いただき、
できるだけ多くのケーススタディを集めてみました。

 

 

具体的な内容については本文のそれぞれの項目でくわしく触れていますが、
その結果は、ほんとうに驚くべきものでした。

 

 

いま…。

 

わたしたち夫婦は、だいたい週に1度か2度、愛し合っています。

 

 

 

これが多いのか、少ないのか、自分ではわかりません。
同年代の夫婦で、ほとんど毎晩のように愛し合っているとおっしゃる方もいます。
…それでも、何年もセックスレスだったあの頃に比べたら、夢のような毎日です。

 

 

毎晩夫の帰りを待ちわび、
いっしょに食卓を囲み、
娘を寝かしつけた後、
ベッドを共にする…。

 

 

まるで新婚の頃のような、甘くやさしい空気が家庭に満ちあふれています。
セックスは夫婦の全部ではないかもしれませんが、
絶対になくてはならない大切な一部なんだと、心からそう思います。

 

 

セックスレスに悩む女性を、ひとりでも多く悩みから解き放ってあげたい………

 

その想いをこめて、ペンをとりました。

 

夫婦関係修復アドバイザー

 中道ひろこ